高橋洋一日銀の情報操作を斬る 前原騙されるなと

全文 現代ビジネス 高橋洋一論文から

かつてなく国会で日銀法改正が盛り上がっている。みんなの党だけなく、自民党、公明党からもその声が上がり始めた。それに呼応して、日銀が情報操作を国会議員やマスコミに行っている。

先週の本コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31737)で、日銀は、FRBのインフレ目標の導入という不都合な事実について、国会議員やマスコミなどに「あれはインフレ目標ではない。バーナンキもそういっている」と説明していると書いた。中には、レベルの低い日銀職員もいて、FRBは"GOAL"を決めたが、"TARGET"ではないとか滅茶苦茶な説明をしている者もいた。これは論外としても、前原誠司民主党政調会長などは、日銀の言うことを鵜呑みにして話をしている。

バーナンキの原文を読めばウソは一目瞭然

 バーナンキFRB議長の発言の出所は25日の記者会見だ。これは公開されている(http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcpresconf20120125.htm)ので、英語さえわかれば日銀の説明のデタラメさはすぐわかる。

ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙の記者から「物価の安定はゼロでないか」と「インフレ目標か」とのふたつの質問があった。バーナンキ議長は、かつてプリンストン大学での授業のように、「すばらしい質問だ」といいながら、はじめの質問にはつぎのように回答した。

「統計上の上方バイアスやそのほかの問題もあって、インフレ率0%は物価の安定と整合的でない。・・・まず半分くらいデフレ圧力の中で生活しなければいけない。デフレは経済パフォーマンスを悪くし、雇用環境も悪くすることが多いので、0%のインフレ目標はFRBの責務に反する。・・・インフレ率2%は、欧州中央銀行(ECB)その他のほとんどの中央銀行が使っている数字だ。それはほとんどの中央銀行で行っていることと少しも違いはない」

さらに2番目の質問には、「もし、”インフレ目標”を物価最優先して雇用などを二次的なものとするということを意味するのであれば、その答えはノーだ。というのは、FRBは二つの責務をもっているからだ」と答えた。


 後者の答えから、日銀の情報操作は明らかだ。物価だけみれば”インフレ目標”であるが、FRBは、普通の国の中央銀行と違って物価の安定と雇用の最大化の二つの責務があるので、物価だけを目標とする”インフレ目標”でないといっただけだ。その証拠に、その後に、バーナンキ議長は「物価安定の目標達成を遅らせた方が雇用に良いなら、喜んでそうする」といいきっている。それなのに、日銀が「インフレ目標でない」といいたいがために、バーナンキ議長の発言の一部のみを取り上げるのはやり過ぎである。

しかも前者のバーナンキ議長の答えは日本のマスコミでは報道されていない。2月10日の衆議院予算委員会で白川日銀総裁は1%の物価上昇率を目指していると答弁したが、少なくとも世界の中央銀行とは違う。

1月30日の本コラムで書いたように、日銀は「0~2%」を物価の安定と「理解」(目標ではない!)しつつ、「0%以下のデフレの確率は8割2分」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31676?page=3)なので、8割以上も中央銀行の責務を果たしていないということだ。


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このようなバーナンキ議長の実際の発言を知れば、白川日銀総裁は、FRBは日銀に追いついてきたとか日銀は欧米の中央銀行と同じなどといているが、それらが寝言の類であることは明らかだ。ちなみに、バーナンキ議長は7日の米上院予算委員会で「日本とは違う」といっている。

過去の事実のねつ造にまで荷担するマスコミ

 ところで、日銀の「理解」についても、最近日銀はマスコミに対し情報操作しているようだ。13、14日は日銀の金融政策決定会合が行われる。それについてマスコミが報道している。その内容は日銀のリークしかありえないものだ。これまでもしばしば「地ならし」といわれ、金融政策決定会合の前にリークとおぼしきものがあった。その情報は市場関係者であればカネを出しても欲しいものであり、事前に特定の者に漏らしたとなれば、金品の贈与に相当するもので、それだけでも問題であろう。

しかも、今回、11日の日経新聞、NHK報道、毎日新聞では、日銀の「理解」ではなく、あたかもすでに「目標」であるかのように書かれている。例えば、日経では「「物価目標」日銀が見直し 「表現あいまい」批判受け」とされている。


実は、「理解」と「目標」はまったく違う。2006年3月9日の福井俊彦総裁(当時)記者会見で、はっきり説明されている(http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2006/kk0603a.htm/)。

 記者の「各国で既に採用されているインフレーション・ターゲティング、インフレ参照値とは別か」という質問に対して、福井総裁は「概念的に大きく異なるものである」と明言している。続けて「ターゲティングの場合はもちろんのこと、ECB(欧州中央銀行)のようなインフレの定義、あるいは望ましいインフレの定義のように、定義とか参照値とか言う場合には、政策委員会の意見、討議を経て1つの数字、ないしは1つの物価上昇率のレンジ、1つのことを決めるということであるが、そういったことはしていない」と答えている。

これらのマスコミは、日銀関係者からリークを受ける際に、「理解」でなく「目標」とレクされたのだろう。日銀からしてみれば、すでに「目標」なのだと一般の人が誤解することを狙っているのであろう。マスコミは日銀関係者から情報リークを受けるとともに、過去の事実のねつ造に加担していると思われても仕方ないだろう。要するに、こうした報道しかできないマスコミは日銀のポチなのだ。

三菱東京UFJ銀行の「国債暴落シミュレーション」報道の裏側

 それにしても、金融関係で、当局のリークとおぼしきものはまだある。2月2日付けの朝日新聞で三菱東京UFJ銀行による「日本国債暴落シミュレーション」といわれるものも怪しい。2016年にも10年物の長期国債の利回りが現在の1%から3.5%もなって、国債の暴落が始まるというものだ。これのどこが衝撃的なのか。

金融機関ならどこでも、この程度のシナリオでリスク分析を行っており、金融庁もそうしたものを以前から求めている。これが、他の金融機関ではやっておらず三菱東京UFJ銀行でもあたかも初めてのように報道するのはどうか。

それに内容としても、三菱東京UFJ銀行は200兆円資産のうち2割程度を国債で保有しており、その平均的な償還年限は3年程度であることは公開資料からわかる。1%から3.5%への金利上昇であれば、国債の価格低下は8%程度であり、全体資産からみれば2%程度とたいした問題ではない。

たいした話でないことを大げさにいうので、財政当局から財政危機を煽るためにリークされたのではないといわれている。もっとも、財政当局もこうした金融知識(資産負債総合管理 ALM:ASSET LIABILITY MANAGEMENT)がなく、かつて私が財務省のためにALMシステムを構築したものだ。金融知識がないからこそ、その程度の話で財政危機を煽れると思うわけだ。

 あるエコノミストの勉強会でも、今後日本の経常収支が赤字に転落して、赤字国債を国内貯蓄でまかなえなくなって、金利上昇が起こり国債暴落というシナリオが話題だった。ただし、本コラムでは、長谷川幸洋さんが経常赤字について何が問題と書いている。

経常収支赤字になっても、それで経済成長しなくなったり、金利が上昇するというのは直結するわけでない。あれこれと考えるより、データをみたほうが早い。20年間における経常収支対GDP比と経済成長率の関係、経常収支対GDP比と金利の関係をそれぞれ世界各国で調べたものを掲げておく。

経常収支赤字国でも、高成長や金利の低い国はいくらでもある。経常収支が赤字になっても、それだけで経済成長が下がったり、金利が上昇するわけでないことがわかるだろう。

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