これが処方箋を持つ民間の財務大臣候補だ! 高橋洋一。デフレ脱却と「負の所得税」が合理的な解決策

これが処方箋を持つ民間の財務大臣候補だ! 高橋洋一の俗論を撃つ!
【第40回】 2012年5月31日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] 実際、厚労省(社会保

険関係)は徴収については法的には税と同じで、給付(公金支出)についても「

負の税」として厳格に行うべきところなのに、税との扱いの差は大きい。本コラ

ムでは歳入庁の話をしてきたが(例えば、5月2日「消費税の地方税化に対する

反論に反論する」)、国民背番号の導入とともに歳入庁を創設し、社会保障(徴

収・給付)と税を一体として運用しなければいけない。これが本来の意味での社

会保障と税の一体改革で、今議論されているものはまやかしである。
http://diamond.jp/articles/-/19320?page=4

急にクローズアップされた生活保護問題
デフレ脱却と「負の所得税」が合理的な解決策
12345 生活保護問題が急にクローズアップされた。きっかけはある芸人の出

来事だ。

 一方、今国会で議論されている社会保障と税の一体改革では、建前として社

会保障充実や財政再建のために消費税増税が必要という。もちろんこれは単な

る方便で、現実には政権交代で膨らんだ歳出規模が10兆円以上(図表1)あり、

その穴埋めに使われるだけなので、社会保障充実や財政再建にはならない。

本当に不正受給は多いか
 生活保護に関心が高いのは、不正受給の問題があるからだ。多くの人が生活

保護には不正受給があるのではないかと疑っていることがある。今年3月1日に

公表された2010年度の不正受給は2万5355件、128億7426万円だった。生活

保護費は3.3兆円なので不正受給は0.4%しかないということになるが、誰もが

この数字は氷山の一角であると思っている。

 筆者も仕事上、地方公共団体の事務をみることがあるので、不正受給の問題

が根深いのは知っている。ただし、日本の生活保護は必要なところにいってい

ないという批判もある。ある研究では、生活保護水準以下の所得で暮らしてい

る人は人口の13%と推計しているが、実際にもらっている人は1.4%にすぎない

というものもある。

 これはやや極端としても、厚労省推計では要生活保護世帯なのに、生活保護

を受けていない世帯は229万世帯だが、実際に生活保護を受けている世帯は

135万世帯だ(2010年4月)。となると、364万世帯が本来なら生活保護が必要

なのに、37%の135万世帯しか生活保護を受けていないことにある。つまり、生

活保護については、本来受けるべき人が受けずに、受けるべきでない人が受け

ているという「いびつな現状」になっている。

 もう一つ関心をもたれているのは最近の「生活保護費の膨張」だ。政権交代後

、生活保護者は35万人増えて210万人となり、生活保護費は3.3兆円になって

いる。「生活保護費の膨張」が「不正受給」と関連づけられて、一般国民の間に

怒りが高まっているようだ。

生活保護の受給比率は低い
 そこで、「いびつな現状」を改善し、「生活保護費の膨張」を抑える両面作戦が

必要になってくる。

 そのために分析を慎重に行う必要がある。もし、「生活保護費の膨張」が「不

正受給」に基づくのであれば、解決策は簡単で、生活保護費のカットでいい。も

し、そうでないとすれば、生活保護費のカットは、不正受給の改善には少しは効

果があるかもしれないが、本来受けるべき人が受けられないことを助長し、「い

びつな現状」の改善にならない。

 分析の前に、各国の生活保護の実情も知っておこう。日本の生活保護費は、

国際的にみても、給付総額は少なく保護されている人も驚くほど少ない(埋橋孝

文「公的扶助制度の国際比較」『海外社会保障研究』127号、Summer 1999年

)。

 日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均の公的扶助総額の対

GDP比は、それぞれ0.3%、4.1%、2.0%、2.0%、3.7%、2.4%だ。現時点でみ

ても日本は0.7%程度である。また、日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、

OECD平均の公的扶助を与えられている人の総人口に占める比率は、それぞ

れ0.7%、15.9%、2.3%、5.2%、10.0%、7.4%だ。現時点でみても日本は1.4

%程度にすぎず、先進国の中で際立って低い数字である。

 なお、生活保護者1人当たりの金額の1人当たりGDPに対する比率をみると、

イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均はそれぞれ、43%、26%、87

%、38%、32%であり、現時点の日本は50%と先進国の中でも比較的高い。

生活保護増加の本当の理由
 政権交代後、生活保護者は175万人から20%、35万人増えて210万人になっ

ているが、生活保護世帯の世帯類型をみると、高齢者世帯、母子世帯、障害者

世帯、傷病者世帯、その他世帯のうちその他世帯の伸びが高く(図表2)、それ

ぞれの構成比は高齢者世帯42%、母子世帯8%、障害者世帯12%、傷病者世

帯21%、その他世帯17%になっている。不正受給がもし統計数字0.4%の10倍

の4%としても、20%の増加をとても説明できない。


 となると、生活保護者数の増加を何で説明できるだろうか。この増加はほとん

どデフレで説明可能だ。デフレになると所得が失われ、失業が増える。このため

インフレ率と失業率の間には逆相関があり、この関係はフィリップス曲線として

知られている。これと同じ説明であるが、1990年からの生活保護者増加率とイ

ンフレ率には明確な逆相関関係があり、相関係数は▲0.9となる。具体的にいえ

ば、インフレ率が▲1%だと、生活保護者は5%(10万人程度)増加する(図表3

)。


次のページ>> 「いびつな現状」の改善のために必要なこと
 こうした分析から、自民党の議員などが求めている生活保護費の10%カットに

合理性はない。むしろ民主党政権になってデフレから脱却しなかったので、経済

的な苦境に陥り、それが生活保護者の増加を招いた公算が強いので、デフレか

ら早く脱却することが必要である。インフレ率が2%程度になれば、10%の生活

保護者が減少して、「生活保護費の膨張」を抑えることは可能である。

「いびつな現状」を改善する方策
 次に「いびつな現状」の改善である。これは、役所の側のチェック体制で対応

するしかない。

 実際、厚労省(社会保険関係)は徴収については法的には税と同じで、給付(

公金支出)についても「負の税」として厳格に行うべきところなのに、税との扱い

の差は大きい。本コラムでは歳入庁の話をしてきたが(例えば、5月2日「消費税

の地方税化に対する反論に反論する」)、国民背番号の導入とともに歳入庁を

創設し、社会保障(徴収・給付)と税を一体として運用しなければいけない。これ

が本来の意味での社会保障と税の一体改革で、今議論されているものはまや

かしである。

 いずれにしても、まず、歳入庁と国民背番号の導入が、「いびつな現状」の改

善のために必要だ。当面、生活保護の「罠」に落ち込むと、なかなかそこから出

ることができない。そのためには「アメとムチ」が必要だ。ムチとして一定期間で

給付を打ち切ることも考えられる。もっともこれは慎重に行う必要がある。アメと

して、働くと給付打ち切りでなく、可処分所得が少しずつ増えるやり方が必要だ



 このやり方としては、国民背番号と歳入庁の導入後、ベーシック・インカムに

通じる「負の所得税」(具体的には、先進国で既に導入されている給付付き税額

控除が第1歩。給付付き税額控除については、1月27日の本コラム「社会保障を

人質に理屈なき消費税増税を狙う 消費税の社会保障目的税化は本当に正し

いか」参照)がある。すると、厚労省の中で生活保護を含み縦割りとなっている

社会保障を、一括して一元的に行うことが可能となってくる。
 そこまでいけば、生活保護に伴う認定の不合理性などが排除され、客観的な

所得・資産の把握がほぼ完璧に行われる中で、生活保護制度も「負の所得税」

に吸収されてくる。もちろん、この段階では不正給付は格段に少なくなり、「いび

つな現状」は改善されるはずだ。

 生活保護問題に金融政策が関わっていることに違和感を持つ人もいるだろう

。しかし、米国の金融政策は雇用の確保が法的に義務づけられている。バーナ

ンキFRB議長に対する記者会見でも、話題はもっぱら失業率の話だ。

 金融政策で失業率を低下させることができるので、生活保護問題の解決には

有効だ。日本では、雇用・労働問題を構造問題としてとらえる経済学者、社会学

者、法学者ばかりだ。雇用、労働問題をマクロの金融政策で対処しようとしない

のは、筆者から見れば奇妙なことに思える。

 マクロにおける金融政策によるデフレ脱却と、ミクロにおける縦割り行政の打

破になる「負の所得税」(歳入庁と番号制を含む)の導入、この両輪で生活保護

問題は合理的に解決できるだろう。


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