ただの右翼の親父と思っていた西尾氏の警告が左翼の色眼鏡を外したら自分の危機感にまったく重なっている

2016.6.10 09:00
【正論】
トランプ外交も本質変わらず…米国への「依頼心」こそ最大の敵 評論家・西尾幹二

 米大統領選挙のあとに日米関係は大きな変化が訪れ、わが国は今まで考えていなかった新しい国難や試練を強いられるのではないか、という不安が取り沙汰されている。

≪孤立主義は米外交の基本ライン≫

 オバマ米大統領の8年間の外交政策の評価は低い。現在の世界の不安定は相当程度に彼の不作為に原因がある。何と言っても同盟国を軽視し、仮想敵国(中国やイランなど)との融和を図る腰のぐらつきは困ったもので、日本、イスラエル、サウジアラビア、トルコなどをいたく不安がらせてきた。さらにイギリス、ドイツ、韓国を「習近平の中華帝国」に走らせ、フィリピンまでが“親中派”ともされる大統領を選んだ。

 米国のいやがる安倍晋三首相のロシア接近も、親米一辺倒の昔の自民党なら考えられぬことだ。すべてはオバマ政権が覇権意志を失いかけていることに原因がある。

 大統領選共和党候補トランプ氏が言い立てている外交戦略は、オバマ大統領の政策とはまるきり違い、大胆なものとの印象を与えているが、それほど大きな隔たりはない。「米国は世界の警察官にならない」と2度にわたって宣言したオバマ大統領の方針と本質的な違いがあるとは思えない。
 背景には軍事予算の大幅削減の事情があり、だれが大統領になっても「孤立主義」「米国第一」「国際非干渉主義」は、イラク戦争が失敗と分かってから以後の米国外交の基本ラインである。ただトランプ氏は、中国やロシアに対しては同盟を組まなければ米国も自分を守れないということが全く分かっていない点に、相違があるのみである。

≪あらゆる面で依存してきた日本≫

 動かせない米国の内向き志向の情勢下で、肝心なことは、わが国が依存体質をどう脱し、自立意志をどう高めるかである。軍事力を背景に現状を変更しようとしている中国に対する米国の抑止力は弱まるだろう。アジア各国は米国への不信感を募らせ、それぞれ生存を図ろうと中国との関係を調整し(すでに始まっている)、同盟の組み替えを試みるようになるだろう。そして国内に中国共産党の意向を迎える勢力の拡大を少しずつ許すようになるだろう。わが国も多分、例外ではない。

 恐るべきことが始まろうとしている。米国の“離反”を目の前にして、わが国が今まで米国に何をどのように依存していたかを整理してみる必要がある。核抑止力と通常戦力、軍事技術の基本的な部分、安全保障に必要な国際情報のほぼすべて、エネルギー輸送路の防衛、食料の大部分、驚くべきことに水資源も食料という形で大量に輸入している。これだけ依存していれば米国から離れられるわけがない。

 米国は今でも世界の国防費の37%を掌握している。中国が11%でそれに次ぎ、ロシアが5%、約3%が英、仏、日本である。日本の自衛隊の質は非常に優れていて、装備の性能や技術力も高いが、兵員や装備は数量的に劣っている。法的準備態勢などはご承知の通り、だめである。なぜ日本が安全であったかといえば、世界最強の軍事大国と同盟を結んできたからである。

 これは否定することのできない事実である。そしてこの事実の代償として、わが国の国土に133カ所の米軍基地(施設・区域)を許し、軍事装備品の米国以外からの購入も自主開発も制限され、約1兆ドルにも及ぶ米国債を買わされ売却する自由はなく、貿易決済の円建ては事実上、封じられている。しかも金融政策まで米国の意向に合わせざるを得ない。

≪国内が引き裂かれる状況に≫

 これはすなわち“保護国”ともいえる証拠である。逆に米国は日本から防衛費の何倍もの利益を得ていることになる。トランプ氏はこの事実を知らない。わが国民も中国の「侵略」を目の前に見て、同盟国に責任と補償をさらに求めてくる米国のこれからの対応-大統領が誰になっても-に対し、今まで体験してこなかった想定外の戸惑いと苦悶(くもん)を強いられることになるだろう。

 なにしろ中国の現預金は22兆ドル(約2400兆円)もあり、そのだぶついているカネを、人民元が暴落しないうちに少しでも取り込もうと、欧米の金融資本は目の色を変えている。南シナ海を侵す醜悪なスターリン型全体主義体制を、あの手この手で生き永らえさせ、温存することに必死である。日本の財務官僚も例外ではない。

 恐ろしいことが起こりつつある。日本は一国では中国に立ち向かえない。米国の助けが必要である。しかし米国は内向きで、日本が必死になってすがりつこうとすればするほど、背負うべき負担はさらに倍増され、一方、国の独立と自存に無関心な国内の親中派が米国との関係を壊そうとする。

 このように国内が引き裂かれる状況になるのをどう避けたらよいだろう。これからの日本に真に大切なのは、国民が自らの弱点によく気づき、国家の自立意志を片時も忘れぬことだろう。(にしお かんじ)

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