日米安保体制はいつまで機能していくのだろうか?軍事的には米軍に握られながらその保証はうすら寒い状況

2017.6.7 11:08
【正論】
「日本に何ができるのか。アメリカを前面に立たせて日本は後ろにいるつもりか」 トランプ米大統領のいらだちが問うもの 専守防衛で拉致は解決しない  福井県立大学教授・島田洋一


 トランプ政権発足前後から続いた日米の“蜜月期間”は終わったのか。

 5月26日、先進7カ国(G7)首脳会議直前に行われた日米首脳会談の場で、北朝鮮と中国の関係に話題が及ぶや、トランプ大統領が態度を一変させた。関係者の話を総合するとこうなる。

 中国はよくやっていると語るトランプ氏に対し、安倍晋三首相はその不十分である旨を説いた。正しい指摘である。ところがトランプ氏は、いらだちもあらわに、居丈高に言い放つ。

 では、日本は一体何ができるのか。もし北朝鮮と軍事衝突になった場合、アメリカを前面に立たせて後ろにいるつもりか。ミサイル防衛に力を入れると言うが、自分を守るだけの話じゃないか。

 こうした趣旨の言葉がトランプ氏の口から矢継ぎ早に飛び出した。国際場裡(じょうり)では先輩格の安倍氏にアドバイスを求めるといった春先までの態度はすでに、もうなかった。

 会談後の記者会見で安倍首相は、「特に、平和安全法制を制定したことによって、日米が日本を守ることにおいて、お互いが助け合うことができる同盟になりました。助け合うことができる同盟は、当然、その絆を強くします」と語っている。

 確かに平和安全法制によって、日米の「絆」が音を立てて崩れる事態は回避できた。

 しかし、東アジア情勢が緊迫化する中、「日本を守ること」において「日米が助け合う」(米側にしてみれば、これ自体、身勝手な言い分ということになろう)を超えて、日本は何ができるのか、というトランプ氏の問いに応えるものではない.
≪米国に突き放される可能性も≫

 安倍首相は拉致問題に関して、「動乱時には米軍による救出という体制が取れるよう、米政府に拉致被害者の情報を提供し協力を依頼している」と国会答弁している(平成27年7月30日)。しかし、仮にトランプ氏から、「自国民の救出ぐらい自分でやってくれ。米軍にそんな余裕はない」と突き放されたらどうするのか。

 冒頭のやり取りに照らし、そうした可能性は十分ある。動乱、すなわち武力衝突を伴う混乱が続いている間は、米軍は当然、敵の早期無力化と自国兵士の安全を最優先としよう。

 ある拠点施設に日本人拉致被害者がいる可能性があるから、砲爆撃は控え、地上部隊が入っていく形にしてほしいなどと申し入れれば、「それなら日本が自分で制圧しろ。できないなら口を出すな」という話になろう。攻撃作戦を他国に全面的に委ねる「専守防衛」の弊害は、こうしたところにも表れる。

 政府は、米軍が保護管理する「暫定統治機構」が北朝鮮にできた段階で、その同意に基づき、自衛隊が拉致被害者の移送に当たる案を検討中とされる。ただ、実施の条件となる制空権確保は米軍に依存すると位置づけている。

 また地上での救出活動中も、自衛隊の武器使用は制限があるため米軍の協力(すなわち護衛)が必要だという。

要するにアメリカが一定期間、占領軍として存在することを前提としているわけだが、トランプ氏は選挙期間中、米軍が海外で占領軍的役割を担うことを「愚か」(stupid)と口を極めて批判していた人物である。

 有事に際しては、できる限り海空軍力による攻撃に特化した作戦を選ぼうとするだろう。自衛隊が活動できる条件を、一から十までアメリカに整えてもらうという発想では、結局、自衛隊が動ける機会はないままに終わりかねない。

 ≪敵基地攻撃力の整備を目指せ≫

 こうした主体性を欠いた現実遊離の姿勢はミサイル問題でも顕著である。北朝鮮はすでに、高度2000キロを超えるロフテッド軌道(鋭角に高高度から落ちてくる)ミサイル実験に成功している(5月14日)。この発射態様だと「迎撃がより困難になる」(防衛白書平成28年版)。ダミーも含め同時に多数発射された場合には、完全にお手上げとなる。

 であれば、論理必然的に敵基地攻撃力(指令系統中枢への攻撃も含む)の整備が必要となるはずだが、いまだ政治日程に上る気配がない。
 このままでは、日本の防御システムは、かつてのフランスのマジノ線に似たものに終わりかねない。独仏国境沿いに巨費を投じて建設された要塞線は、ナチス軍がベルギー領を通る迂回(うかい)ルートで侵入してきたことで、およそ意味を持たなかった。ロフテッド軌道の北朝鮮ミサイルも同様、いわば高度の点で防御システムを迂回して侵入してくる。

 「拉致、核、ミサイルの包括的解決」には、北朝鮮の現体制を倒す以外にない。日本が敵基地攻撃力の整備に本格的に乗り出すなら、それを嫌う中国が、現状変更に向けて動く可能性も高まろう。専守防衛に固執する限り「アメリカ頼み」以外の展望は開けない。(福井県立大教授・島田洋一 しまだ よういち)

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